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塔に残された魔法使いは、壊れた壁を感情の無い瞳で見つめた。



「目覚めが思いの外、早い……。覚醒も、すぐか…」



暁の姫の意志の強さを見誤っていた。


暁の姫とは、正の感情、前進する強さ、明るさ。
もっと、簡単に言えば、光と影であれば光に価する存在。



欲望、弱さ、結して叶わない願望の産物であるこの夢は、暁の姫の輝きにすぐに消えてしまう。


「このイルヴァーナを繋ぎ止めておくには、暁の姫はなんとしても消さなければ……」



壊れた壁から見える深い森にを見つめる。



「でもまぁ、あの姫は自分の力に怯えていたようだ。心なら、いかようにも壊せる」



心は力の源である。それを壊す。
では、この森に住まう幻魔達を動かすとしよう。



魔法使いは森へ向かって手を翳す。


「暁の姫を殺せ」


ーギャギャーッ!!

それに呼応するように、あちこちから幻魔の鳴き声が聞こえた。


「苦しめ、暁の姫よ。そして、この世界から消える事だ」


魔法使いは不気味に笑い、サッと霧のように姿を消した。