「雫、行くぞ」


「わわっ!!」



私は勢い良く手をひかれ、走り出す。
塔の扉を出ると、そこから物凄い勢いで階段を駆け降りた。



「暁の姫、お前はここから出られない」


塔に響き渡る仮面の男の声。


不安で、怖くて、それでも、強く引くこの手が私を守ってくれるような気がして、心強かった。


ーシュルルルッ!!


「あっ!!ルーク!!」


目の前に私たちの体より遥かに大きいいばらが、私たちの足元を崩す。



「チッ……クソッ!!」


ルークは私を胸に抱き込み、二人まっ逆さまに落ちていく。



「いやぁぁっ!!」

「っ!!」


どうしよう!!
このままじゃ二人、死んじゃう!!


私、ただの高校生だし、何も取り柄もないし、特別な力もないけどっ………



今だけは、何でもいい……奇跡を起こして!!!
私とルークを助けて!!お願いっ!!


ただ祈る。
こんな時にまで、私の頭を抱えて、守るように落ちるルークを、私も………守りたい!!



ーパァァァァァッ!!!!



『守りたい』、そう強く願った瞬間、背中に熱い熱を感じた。



「あぁっ………!?」


ーバサッ!!



視界に、燃える炎が見えた。
そして、それはいくつもハラハラと落ち、次第に白い羽へと姿を変える。


「なっ………お前っ!?」


ルークの視線は、私の背中に向けられていた。
私の視界にも入る、熱く燃える紅蓮の炎の翼。



ーバサッ、バサッ


翼をはためかせると、体が宙へと浮いた。