ツンツンされていたかと思えば、ギューと抱きしめられて。


ぬるい温度と鼻をくすぐる蠱惑的で独特な香り。


そして力強い腕の感触。


柄にもなく少し戸惑ってしまった。


何にって、嫌だと思わなかった自分の感情にだ。



「ドキドキしてるってことは、僕を意識してるってことなんだよ」


「え。違うと思うんだけど」



それは刃物だよ、原因はあんたの剣だよ。


命の危機を感じた体の防衛本能に他ならないよ。


証拠に私の心臓少し落ち着いてきたし。



スルリと離された腕。


ついでに鎖も緩くなってバンザイ状態からも開放された。やったぜ。


振り返ると宵が首を傾げている。


しかも心底不思議そう。


え、なぜに?