(四)

あゝ、又脱線したぜ。kazukoとの 蛍狩りのことだった。

とに角、星がスゴイんだ。街中で見るのとは、まるで違うんだ。
空一面が、星で覆われているって感じだ。感動物だ、ほんとに。

しっかし、mugegawaなんて言う田舎は、真っ暗でやんの。
あぁいうのを、〔漆黒の闇〕と言うんでないかい。
月が隠れると、なーんにも見えやしない。
まっ、それはそれで いいんだけどサ。

懐中電灯で足元を照らしながらサ、小川の縁を歩くんだぜ。
月が出てる内は、ぼんやりだけど 辺りが見えるんだ。
隠れると、大変なんだ。照らされた所しか、見えねえんだよ。

「あんまり縁を、歩かないようにね。崩れる時があるから」
「りょう、かい!」
言ってるそばから、危うく滑りかけた。

「うおっとぉ!」
「大丈夫ぅ?」
kazukoに、助けられた。俺の体をしっかりと、抱き止めてくれてさ。
ククク、いい匂いだった。なんかこう、甘~い匂いがした。

「電灯、消して!」
いたよ、いたあ! 一匹、ぼんやりと光る蛍が。長草って言うのか?
細長い草の陰から、見え隠れしてる。何とも、幻想的だった。

しゃがみ込んでね、暫く見とれてた。
で、ふっとkazukoの横顔を盗み見したら、すんげぇ、可愛いの!
それからはもう、蛍そっちのけで 見とれちゃった。
顔は蛍の方に、目はkazukoにって。

もう、ドキドキものよ。ギュッ! と、抱きしめたくなった。
「カズちゃーん! 用意できたよおぉ!」
声がしなかったら、どうなったことやら。