私が手当していた彼が、


 私を抱き上げて、


 今まで座っていたベッドに優しく下ろす。



 おとぎ話の王子様が、お姫様にするように。



「まだ、痛いんです」



 ふたり分の重みに、ギシ……と軋むベッド。


 発火したように熱い顔を背ければ、


 白衣の裾を膝で踏まれて、逃げられない。



「無理はやめてくださいね……俺までツラくなる」


「無理なんてしてないわ」


「ウソ」



 長い指先が、ガーゼ越しに隈をなぞる。



「俺は、ただ会いたいからここに来てるわけじゃないんです。先生は知らないでしょ?」



 ……そうよ、知らないの。


 知らない、フリをしていたの。



 あなたは、きっと知っていたんでしょう?


「また私の仕事を増やして!」って憎まれ口を叩きながら、


 あなたを追い返さない理由を。