はいストップ!


 きみが好きなのは私のピアノであって、私じゃないでしょ?


 いくら説得しようが聞く耳を持たず、後輩のドS行為はエスカレートの一途を辿っている。



「好きです。先輩ください」


「否」



 放課後、茜色の音楽室。


 ピアノを奏でていると、後輩が現れた。


 蜂蜜のように甘ったるくて粘着質な言葉を浴びせてくるので、胸ヤケを隠しもせずに跳ね返してみたら。



 ドンッ!



 ……おや、可愛い顔して手が早いじゃないの。



「落ちないなら、わからせる」



 ちょっと見上げた先に、アッシュグレーの髪と、瞳。


 日本人離れした彫りの深さは、なるほど、女子ウケ抜群なんでしょう、けどね。



「何様、だッ!」


「ったぁ!」



 壁ドンすれば誰でも落ちると思うな、イケメン。