来室者が増えるのは、正直喜ばしいことじゃないの。


 私が務める保健室では、ね。


 にも関わらず、背中に痛いくらい注がれる視線が1人分。



「先生は、チーク何使ってるんですか?」


「あら、メイクアップアーティストにでもなりたいの?」


「いやぁ、先生っていつも、ナチュラルメイク中のナチュラルメイクだよなぁって思って。グロスもほんのりだし」


「自然な顔色を心がけているの。自分の体調と向き合うのも、仕事のうちですからね」


 最後に消毒綿を補充し、棚を閉める。



「よろしくお願いします」



 左手を差し出してくるのは、最近、来室記録に名前を書き連ねている男子生徒だ。