エピローグ
ポストには一通の手紙が入っていた。
それは、隼人の父親からだった。
「隼人へ
すまない。本当に私は最低な人間だ。
酒を飲むと自分が押さえられなくなって しまうんだ。
依存症と、言われたよ。
もう、こんな自分でも
いいと思っていた。
だけど、お前に久しぶりに
会ったとき、悲しかった。
苦しくてたまらなかったんだ。
お前の笑顔が一度でいいからみたい。
施設に入ることにしたんだ。
きっと治す。
そしたらまたお前に会いたい。
一生をかけて償うよ。
許されるのなら、お前を愛したい。」
3年後、この日隼人は車で
あるところに向かっていた。
最初に行ったのは母親の墓だった。
「お母さん、遅くなってごめんね。
おれ、いろいろ間違ってたよ。
これから父さんを施設に
迎えに行くんだ。
……おれ、間違ってないよね?」
しばらく見つめていたが
やはり無言だった。
苦笑いして立ち上がり、
墓に背を向けたその時、
暖かい追い風が優しく吹いた。
「…うん、…ありがとう。」
施設に着いて車から、
歩いてる父親を呼んだ。
「父さん。」
ずっと心からそう呼べる日を待っていた。
父親は病気を克服した。
その努力は計り知れない。
父親の顔ははどこか誇らしげだった。
隼人も自分のために
努力した父親を誇りに思えた。
助手席に座った父親は笑顔で言った。
「隼人、ありがとう。
お前を本当に大切に思っているよ。
本当に…ありがとう。」
そういいながら父は泣いていた。
初めて見る、父の涙だった。
きっとこうやって
苦しみも痛みも押し殺してきたんだろう。
真実を知るのは遅かったが、
それからどう行動するかで
道はかわってきた。
なにかいい思い出を、
そう思い隼人は言った。
「どこかみんなで旅行でもいこうか。」
嬉しそうに頷く父親の姿が
目の端に映っていた。
赤信号が間もなく、青に変わる。
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ありがとうございました!!!!