8.
薬の匂い。初めてみる天井。手の温かさ。
隼人の手を握ったまま眠っているのは、
千華だった。
「千華…。」
千華の髪を撫でた。
千華の背中が動いているのがわかる。
千華は確かに生きていて、ここにいる。
よかった、心からそう思った。
千華は目を覚ました。
一瞬驚いたような顔をしてから笑い、
おれを抱きしめた。
「隼人…よかった…」
そういいながら泣いている千華の体には
まだたくさんの傷があった。
おれも千華を抱きしめた。
お互いの額を合わせた。
「ごめんな、ごめん…」
「本当に、もう会えないかと思った。
私もごめんね…」
もう一度強く抱きしめた。
もう離さない、もう失わない、
二回目の、誓いのキス。
その30分後、千華の祖父と祖母と
春希が連絡を聞いて到着した。
春希は変わらぬ愛をおれに向けてくれた。
でも抱きしめたその体は
驚くほど細かった。
その体に触れる度、
春希の感じた恐怖が伝わるようで、
涙がこぼれた。この恐怖はおれの手で
消そう。何度も謝りながらそう誓った。
隼人が倒れてからも、
千華はしばらく意識を取り戻さなかった。
祖父と祖母は、
親が二人とも動かないなんて絶望する、
その姿を見るなんて
春希にとって残酷なことだ。
そう思い、
あまり病院には連れていかなかった。
千華は奇跡的に意識を取り戻した。
春希はずっと千華に抱きついていた。
母親の温かさを隅々まで感じていた。
それから千華は
隼人がこんなことになったのは
自分のせいだと自分を責めたが、
そんなことをして、隼人くんが
目を覚ますと思うのか。
そういったのは祖父だった。
隼人が首をつっているのをを見つけ、
迅速に対応した。だが、娘と孫を
見捨てようとしたことは明らかだ。
一番隼人を責めたいのは祖父だった。
だが、
気持ちとは反対のことを千華に言った。
祖母も千華と春希を励まし続けた。
二人は誰よりも、
娘の家族の幸せを祈っていた。
退院した日の夜、
しなければならないのは
人形を燃やすことだった。
「本当にいいの?
お母さんの形見なんでしょ?」
「約束だからいいんだ。
それにこれがあると邪魔をすると思う。
もう邪魔されたくないからね。」
「約束?
何を?」
「そう。大切な約束。
おれたちの幸せだよ。」
千華は首をかしげて
意味がわかっていない様子だったが
しばらくしてにっこり笑い、
「そっか」
そう言った。
夜の暗闇に咲く炎は綺麗で、
強くなれる気がした。
炎は高く燃え上がった。
まるで、未来を照らすかのように…。
薬の匂い。初めてみる天井。手の温かさ。
隼人の手を握ったまま眠っているのは、
千華だった。
「千華…。」
千華の髪を撫でた。
千華の背中が動いているのがわかる。
千華は確かに生きていて、ここにいる。
よかった、心からそう思った。
千華は目を覚ました。
一瞬驚いたような顔をしてから笑い、
おれを抱きしめた。
「隼人…よかった…」
そういいながら泣いている千華の体には
まだたくさんの傷があった。
おれも千華を抱きしめた。
お互いの額を合わせた。
「ごめんな、ごめん…」
「本当に、もう会えないかと思った。
私もごめんね…」
もう一度強く抱きしめた。
もう離さない、もう失わない、
二回目の、誓いのキス。
その30分後、千華の祖父と祖母と
春希が連絡を聞いて到着した。
春希は変わらぬ愛をおれに向けてくれた。
でも抱きしめたその体は
驚くほど細かった。
その体に触れる度、
春希の感じた恐怖が伝わるようで、
涙がこぼれた。この恐怖はおれの手で
消そう。何度も謝りながらそう誓った。
隼人が倒れてからも、
千華はしばらく意識を取り戻さなかった。
祖父と祖母は、
親が二人とも動かないなんて絶望する、
その姿を見るなんて
春希にとって残酷なことだ。
そう思い、
あまり病院には連れていかなかった。
千華は奇跡的に意識を取り戻した。
春希はずっと千華に抱きついていた。
母親の温かさを隅々まで感じていた。
それから千華は
隼人がこんなことになったのは
自分のせいだと自分を責めたが、
そんなことをして、隼人くんが
目を覚ますと思うのか。
そういったのは祖父だった。
隼人が首をつっているのをを見つけ、
迅速に対応した。だが、娘と孫を
見捨てようとしたことは明らかだ。
一番隼人を責めたいのは祖父だった。
だが、
気持ちとは反対のことを千華に言った。
祖母も千華と春希を励まし続けた。
二人は誰よりも、
娘の家族の幸せを祈っていた。
退院した日の夜、
しなければならないのは
人形を燃やすことだった。
「本当にいいの?
お母さんの形見なんでしょ?」
「約束だからいいんだ。
それにこれがあると邪魔をすると思う。
もう邪魔されたくないからね。」
「約束?
何を?」
「そう。大切な約束。
おれたちの幸せだよ。」
千華は首をかしげて
意味がわかっていない様子だったが
しばらくしてにっこり笑い、
「そっか」
そう言った。
夜の暗闇に咲く炎は綺麗で、
強くなれる気がした。
炎は高く燃え上がった。
まるで、未来を照らすかのように…。