まだ混乱状態の私に、君はそっと微笑んだ。
「…ねぇ、俺の昔話、聞いてくれる?」
そう言った君の顔は、今にも泣き出してしまうんじゃないかと思うほど儚げで
…そして、綺麗で。
思わず息を呑み込んだ。
なにを思って、そう私に言っているのかなんて分からないけど。
「…私は、匠くんのことをもっと知りたい」
「…俺のこと知ったら、きっとお前も嫌いになるよ」
「……絶対、なるわけないよ」
小声で呟いた私。
…なんでそんなことを言うの?
私の“好き”は大きすぎるくらいで。
何度でも君に伝えるのに。
私の言葉が、君に届いたかどうかは分からないけれど。
「…俺さ、前に好きな人を殺したんだ」
君は静かに、そう語り始めた。