ガラッ





目の前にあったはずの扉は、見当たらない。



…私が今、開けたんだもん。






俯いたままの君は、そのまま動こうとしない。








「……誰」





一言、呟いた君の元へ


私は一歩ずつ歩み寄る。






距離が近づくにつれて、やっぱり緊張してしまうんだ。



…ごめんね

関わらないで、なんて言われたけど。 そんなの無理みたいだ。








私は、君のいる机の目の前で止まった。





「匠くんっ」





諦められなくてごめんね


傍にいたいとおもってごめんね


―――君が大好きだと思ってしまうことを、許してね








君は、やっと顔を上げてくれた。



私と目を合わせようとしないけど、その目には確かに涙の後が残っている。





不機嫌そうな君


意地悪をしてきた君


王子様みたいな君


私を、突き放した君






たくさん知って、たくさん傷つけられた。




…でも私は、もっと傷ついてもいいから君の全てを知りたいんだ。