+ + + +
「ごめんなさい」
私は目の前の人物に向かい、頭を下げる。
「私の好きな人は、匠くん。
…それは、このあとなにがあっても変わることはないんだと思う。」
正直な思いを伝えると、彼はやっぱりか、なんて言って私に笑いかける。
「分かってたよ、俺も。
…でも、どうしてもお前のことが好きだったんだ。
だから、さ。 しばらくの間、忘れらんないとは思うけど、それくらいは許せよな。」
歯を見せて笑うその姿は、どこか苦しそうで。
…私の心も、痛むけど。
「今までずっと、中途半端にしてたこと。 本当にごめんなさい。
…これからは、私もちゃんと匠くんのこと見つめていけるように頑張るから。
…こんな私のこと、好きになってくれてありがとう。
隼人くんは、最高の男友達だよっ」
私は、彼にそう言って微笑みかけ、その場を去った。
「――最後にあの笑顔は、反則だよな」
ポツリと呟いた彼のその言葉は、私の耳に届くことはなかった。