「何て呼べばいいですか?」 「何とでも呼べ」 「じゃあ、パ……」 「パパはやめろ」 「それなら、おとう……」 「却下」 「えーっと、ちちう……」 「却下!」 「だって、何とでも呼べって」 「言ったが、父親って発想から離れろ」 食卓の向かいでは、兄貴が爆笑している。笑いごとじゃねぇよ。まったく。 オレは、だし巻き卵を口に放り込んだ。 丁寧に巻かれた卵の淡い味。しゅっと染み出るだしの香り。 「うまい」 思わず、本音がこぼれた。 師央がパッと顔を輝かせた。 「うわぁ、よかったです!」