そんなこんなで、母は一時期、実家から勘当されていた。
でも、赤ん坊の師央の写真を実家に送って、あっという間に仲直りした。
父のことも、ようやく認めてもらえた。
今では、昔のいざこざは影も形もない。
母の両親である祖父母は、父の大ファンだ。
生まれつき、父は運動能力が飛び抜けて高い。
それが、とある芸能事務所の目に留まった。
ケンカに明け暮れていた高校時代、父はスタント俳優としてスカウトされた。
十七歳のころ、父はデビューした。
殺陣、バイク、ガンアクション、スーツアクション。何でもこなせる、マルチなスタント俳優だ。
しかも、銀髪金眼の寡黙なイケメン。
実はかなりファンが多い。
今、父は初めての大役に抜擢されている。
歴史映画の主役だ。
原作は気鋭の若手小説家の出世作で、籠城する守将の苦悩を描く物語だが、表舞台に立つのは柄じゃないと、父はさんざん渋ってきた。
最初のオファーから丸二年。
説得され続けた父は、ついに折れた。
KHANという映画会社が制作元だ。
師央も一度だけ、現場に見学に行かせてもらった。
敵役の俳優がたまたま暇で、案内してくれた。
父へのライバル心がある、と言ってはいた。
でも、案外いい人たちだった。確か、正木さんと世良さんだった。
ふと、表からバイクの音が聞こえた。
このマフラー音は、間違いない。
父が昔から大切に乗っているマシンだ。
「おとうさんが帰ってきたみたいだね」
ガレージのシャッターが開く音。バイクがガレージに乗り入れる音。
エンジン音が止む。シャッターが閉まる音がする。
師央はキッチンから飛び出した。ガレージにつながる勝手口を開ける。
「おかえりなさい!」
ライダースーツに身を包んだ父が振り返る。
愛車とのツーショットは、いつ見てもカッコいい。
父は、ヘルメットを外して小脇に抱えた。銀色の髪を、くしゃくしゃと掻き回す。
「ただいま」
よく通る声で言って、父は師央に微笑んだ。
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LONELY GUARDIAN
―守り人は孤独と愛を歌う―
おしまい
BGM;
BUMP OF CHICKEN『カルマ』
respect for;
呂文煥(?~?)
呂文徳(?~1271)
張貴(?~1272)
張順(?~1272)
牛富(?~1273)
阿里海牙/アリハイヤ(1227~1286)
忽必烈/クビライ(1215~1294)
劉整(1211~1275)
隋世昌(?~?)
阿朮/アジュ(1227?~1280)
史天沢(1202~1275)
special thanks;
ここまで読んでくださった皆さま。
本当にありがとうございます。
また別の“運命の一枝”で
お会いできますように。
2015.05.05