理仁は師央に笑いかけた。
ちゃんとした笑顔だ。
普段の理仁に戻っている。
「おふくろのことがあって、わかった。命の質量って重いんだよ。生命保険とか、ふざけんなってくらい安い。
だって、うちの財産、一億じゃ利かないよ。それをおふくろ一人の正常な命ひとつで全部、あがなった。すげぇ話じゃん?
だから、殺されちゃダメだよ、おれら。じーちゃんばーちゃんになるまで生きてようぜ」
オレはうなずいた。
命の重さは、オレも知っている。
両親が死んでからの日々。ねじ曲がりかけた心。
あんな思いを、師央にさせたくない。