理仁が鼻で笑った。


歪んだ口元が、普段の理仁と違う。


両目に暗い怒りが燃えている。



「運じゃなかったんだよ。朱獣珠が起こした奇跡でね。でも、親父が願ったんじゃないんだ。そのときだけはさ、おふくろだった。経営が破綻ギリギリまでいったとき、おふくろがさ、何て言ったと思う?」



ぐるりと、理仁がオレたちを見渡す。


海牙が答えを知っていた。



「だから、植物状態なんですね。リヒちゃんのおかあさんは」



オレも鈴蘭も師央も、息を呑んだ。


理仁は淡々とうなずいた。