呆然としていた師央が、ハッとした。



「ど、どうして、こんな……」



海牙が歯を見せて笑った。優男の皮をかぶった猛獣だ。



「こんな状況になってるのか、ちょっと理解が追いつきませんか? 荒っぽいことをして、ごめんなさい。たまにこういうことをしたくなるもので」



兄貴が進み出る。オレと並んだ。



「わかった、おれたちの負けだ」



「兄貴!」



「まあ、正直なところ、本気ではないよ。本気を出す前に度肝を抜かれている。それに、ここは場所がよくない。親の墓をぶっ壊しそうで、暴れる気が起きない」



海牙がチラッと墓石を振り返った。