亜美さんは伸縮式の警棒を伸ばした。一瞬、上段の構え。 繰り出される警棒は、剣道の技じゃない。乱戦向きの、軌道の読みづらい動きだ。 パシッ。 軽く鋭い音が、風にまぎれつつ響いた。海牙が亜美さんの手首をつかんでいる。 「女性とは思えない腕前です」 「ナメんなッ!」 手首をつかむ手をさらにつかんで、体当たりからの崩し技をかけようとして、亜美さんの体が逆に宙に浮く。 突っ込んでいく兄貴のほうへ投げ飛ばされる。 「乱暴をして、すみませんね」 海牙が笑った。