先輩は手を離すと、私が意気消沈してる姿に驚いたのか「大丈夫か?」と顔色を窺うように覗き込んできた。
本当はビンタの一つでもしてやりたい。
この人のせいで、私の恋はほぼ終わったも同然なんだから…
「お前…」
先輩は私の顔を見て、ハッと息を飲んだ。
「陽平のこと、好きなのか?」
肩をビクッと揺らす。
先輩にだけはバレたくなかった。
この人にバレたら何をされるかわからない。
この短時間で、私の中で先輩のイメージが【王子様→俺様】に変わっていた。
「ふーん。なるほどね」
一人で納得した様子の先輩に、イラっとする。
「何が“なるほどね”ですか?先輩があんなこと言ったから…」
薄っすらと涙が滲む。
悔しいから先輩の前では絶対に泣かない。泣きたくない。
必死で滲む涙を飲み込む。
「それにさっきから何なんですか?先生のこと陽平って呼び捨てにしたり、先生の前でキャラ崩壊してますよ…」