「おい。いつまで見つめ合ってんだよ」
「きゃあっ!」
先輩の存在を一瞬忘れて先生に見惚れていると、後ろから首に何かが巻きついてグイッと引っ張られた。
途端に、背中に感じる温もり。
首に絡みつく“何か”。
そして、鼓膜を震わせる低くて不機嫌な声。
「陽平、覚えておけよ。こいつ、俺のだから」
今日、何度目だろう。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔になるのは。
この人、今先生の前で何言いました?
俺のっ、て言ったら先生に誤解されるんじゃ…っ‼︎
それにこの体勢。
非常にマズイ。
後ろから抱き締められてるなんて、誤解を招きかねないでしょ!
「ちょ、ちょっと先輩!離して下さい」
そんなの嫌だ。
先生とどうにかなりたいとは思わないけど、誤解されるのだけは嫌だ。