あっという間に防波堤へ着いてしまった。

あまりに”おかしい”の連続で私は疲れ果てていた。

駅から出たのは間違いだったのではないだろうか。駅ではまだ会話ができていた。私はあそこまでは”存在”していた。今ではあの無愛想で腹立たしい駅員が懐かしい。

父や母に昔はこうして海に連れて行ってもらったものだった。

父が消波ブロックまで行って、妙な海の生き物を捕まえてきてくれた。母は呆れ顔で見ていたものだが、私には特別楽しく思えた。

さすがに消波ブロックまで行く気はなかったが、防波堤によじ登って歩いていった。

帰ることを諦めてはいなかったが、私は途方に暮れていたのだ。

さして狭くもない幅であったが、ヤジロベエのようにして早足で遊びに興じた。

リズミカルに少しだけ跳ねるようにして歩いたのは、陰鬱な気持ちを少しでも忘れたかったからだろうか。

いつの間にか、蝉の鳴き声が止まっていた。