防波堤への道を進むにつれ、私は落ち込み、キリキリと締め上げるような焦燥感と恐怖感は増していった。

あれから数人とすれ違ったが、皆が最初の親子と同じ反応だった。

皆が私など存在しないかのように無反応で、そして皆が大変幸せそうな様子で去っていった。

無表情であったり、悲しそうであったり、ましてや怒っていたりする人は誰ひとりいない。

全員がそれはそれは幸せそうに微笑んでいるというのは何だか気持ちの悪いことだった。

生命力に溢れた太陽に照らされ、気持ちの良い風が吹き、潮の香りが漂うこの地は平和そのもの。皆が幸福そうに過ごしている様子は違う人が見れば楽園のようださえと思えただろう。

しかし私にはここは歪んでいるように思えた。歪みは違和感となり、違和感は恐怖となり、恐怖は焦燥感を煽った。

得体の知れない別世界へ迷い込んでしまったような気がした。

一体私はどこへ来てしまったのだろう。

もう2度と、私は戻れないのではないかという思いが、再びムクリと身を起こした。