先ほど感じた恐怖はどこへやら、古巣に似たこの土地で殊の外リラックスした状態でフラフラと歩みを進めると、向こうから小さな男の子を連れた女性が歩いてくる。


方向的に駅へ向かうのだろうか。男の子はお出かけに上機嫌なようで母親と思われる女性の手を嬉しそうに引いていた。

女性も目を輝かせてぐいぐいと手を引く男の子を困ったような、それでいてどこか嬉しそうな、優しい笑みを浮かべていた。

早く出かけたいであろう男の子には悪いが、私は早速声をかけることにした。

「あの、すみません。ちょっとお尋ねしたいのですけど…。」

立ち止まってへなっとした笑顔を浮かべて声をかける私。誰もがほっこりするような様子そのままで通りすぎる親子。