「……瑠珂く、」


 それはどういう意味なのかと尋ねようと、瑠珂くんの名前を呼ぼうとした瞬間、彼は力強い何かにグイッと引っ張られて遠退いていく。


「……孝くん?!」


 瑠珂くんの服を引っ張り、私から引きはがしたのは孝くんだった。

 いつの間に、屋上にやって来たんだろう?いや、それよりも、孝くんの雰囲気がいつもと違うような……?


「なにしてんだよ」

「あ?」


 ひっ……!瑠珂くんの目がまた冷酷なものに戻っちゃった?!

 というか、えっ?!どうして2人はこんなにも睨み合っているの?あんなに仲良かったのに……。


「瑞季には近寄るなって言っただろ」

「はあ?そんなこと、あんたに指図される覚えはないな」

「ちょっ……ちょっと待ってよ!2人とも!」


 嫌な予感がして、私は慌てて2人の間に割り込む。


「どうしちゃったの?もしかして、喧嘩した?それなら――」

「――瑞季」


 孝くんに低い声で名前を呼ばれ、私は思わず口をつぐむ。

 2人ともピリピリしているようで……この3人でいて、本来なら感じることのない恐怖を感じた。


「俺、言ったよな。コイツには近付くなって」

「言った、けど……」

「それなのにどうして近付いた?!」


 こんなにも声を荒げる孝くんを見たのは、初めてかもしれない。