「……瑠珂、くん?」


 間違っていたら恥ずかしいなぁ……と思いつつも、私は男子生徒の背中に呼び掛けた。すると、男子生徒の肩はピクリと動く。

 そして、ゆっくりとこちらを振り向く男子生徒は……彼は、まごうことなく、私が捜していた龍宮司瑠珂くんだった。


「あっ、よかった!間違えていたら、どうしようかと……思っ……ちゃっ……た」


 ――あ、れ?

 彼に対して違和感を覚えたのは、本当にすぐのことだった。

 私を振り向いた瑠珂くんの目は、今までに見たことがないくらい、ビックリするほどまでに冷酷で。

 よろしくない噂や、孝くんや聖くんが言っていたこと……そして、さっきの女子生徒の青ざめた顔なんかが頭の中を過ぎる。

 ――こ、わ、い。

 今の私の心情を述べるのなら、その言葉が1番合っていると思う。

 目の前にいる彼は間違いなく瑠珂くんなのに、人間ってこんなにも変わるものなの?……と思うほど、目の前の彼からは恐怖を感じた。

 どれくらいの間、見つめ合っていただろうか。もしかしたら、実はそんなに時間は経っていないのかもしれない。

 先に動き出したのは、瑠珂くんの方だった。

 ゆっくりと、確実に、瑠珂くんは私の方に向かって歩み寄ってきた。