そんな俺の我儘で、妹の門出祝いである、軍主催の激励会なるイベントの日、心の底から祝ってやることができなかった。

俺は、まるで葬式の後の会食場のようなテーブルにセットされた白い椅子に腰掛けて、マンモルシェの大きな窓から、珈琲を飲みながら、妹が会場に向かって前進する姿を、眺めることしかできなかった。

ロータリーまで伸びる会場へ連なる長い列は、まるで行軍のようだった。これからの、彼らの生活を暗示しているかのような光景だった。

そもそも、俺がどんな理由で軍に志願したのか。
憧れや、国を護りたいとかいう気持ちは、残念だが、全体の1%にも満たなかった。一番の理由というのは、やはり義父だった。
母と義父が付き合い始めたのは俺の入隊試験の少し前。それは、あくまで表から物事を判断した時の話。この時も、俺は裏側の人間だった。
本当は、かなり前から感ずいていたんだ。妹も俺も。
プリクラの写真を見つけた時、あれは俺が高校1年の頃だった。俺と妹の中では、その頃から、2人の関係は決定的になっていた。
だんだん、我が家で飯を食うようになったりして、喧嘩をしたのを覚えている。
あの頃の飯ほどまずい飯はなかった。美味い飯も不味くなる。
俺は戦った。全身全霊をかけて、拒否し、拒絶し、嫌がった。
幼い考えだが、親を取られる気がして酷く嫌だったのを、今でも鮮明に思い出す。俺は、自分の人生にこうやって他人が介入するのが許せなかった。

結果、2人は俺の反対を無視してゴールインした。聞く耳すら持たないのだから。恋は盲目とはよく言ったものだ。