今日は舞台の千秋楽。
客として観れて、作り手として観れる。


脚本家の醍醐味だ。

笑い声が爆発して
皆が満足そうに帰って行く。
素晴らしい瞬間だ。


僕は、よくナルシストと言われる。

うん、大いに結構。

こんな素晴らしいコメディ作家は居ない。

と、自信だけはある。

だけれど、世間の評価は厳しい。


うん、それも知ってる。

しかし僕を信じてあげられるのは、僕しかいない。

自分を信じていない人間を他人に信じてもらうなんて無理だ。
それが僕の信条だし、座右の銘だ。他人に信じて欲しければ自分を信じろとね。


僕は最高のコメディ脚本家だ。

世の中に二人と居ない逸材。

だけど

売れないコメディ脚本家。



この時間が、
売れない脚本家でいれる時間が


大好きだ。


僕は幸い周りに恵まれている。

だから本当に幸せな時間を過ごしている。

毎日好きな事をやってられるんだから。

本当に感謝してる。

特にこの
自分が書いた作品の
千秋楽は大好き。

何度も来てくれた人や
噂を聞いて慌て来てくれた人。

色んなお客さんが

色んな目線で

僕の作品を見てる。


考えただけでワクワクする

子供の頃の

イタズラを仕掛けた直後みたいな

胸が踊る感覚。

何にも変
はっきり言って収入なんてどうでもいい。

家賃、光熱費とカップラーメンが買えて

たまに酒をおごれる位の収入はある。

それでいい。


この瞬間を味わう為なら
コンビニでバイトしてもいいな。

とにかくその位好きなんだ。




それ以外に欲しいものは

セックスしてくれる女かな。



彼女なんて

贅沢な事言わない。


今の僕にはそんな度量は無い。

端からみたら
ただ好きな事やって貧乏してる

売れない作家だ。


そんな男の彼女が

もし僕の理想通り


若くて
ちょっとやんちゃな子

要するに
ギャルやキャバ嬢みたいな子だったら


すぐに破局だ。


続く訳がない。


お互い好きな事したいんだからね。
続かないと解っていて

彼女作る程バカじゃない。

僕は極度のMだから

与えられるのを待ってる女はいらないし。


そうじゃない女って
なかなか居ない。



だけど
現実問題
性欲だけは
なんともし難い訳で。


結局の所
セックスだけさせてくれる
「都合のいい女」
を探す時間も勿体無いし


自己処理で終わるのだけれど。


要するにその位
今の生活に満足しているって事。


人を笑わす。

なんて素敵な仕事だろう。
この仕事を見付けてから

生活なんかどうでも良くなった。


一人で部屋にいる時間は
パソコンの前に座っている時間で


ただひたすら妄想と想像を繰り返す。


そしてプッと笑う。


プッと笑った妄想と想像が
物語として出来上がっていく快感。

変態?

脚本家なんて変態だよ。


本来自分の頭の中だけで成立するはずの妄想を

他人にひけらかすんだから。


分かりやすく脚色まで加えて。


自分の全裸を
ヌードとしてさらけ出す女優がいる。


脚本家に限らず作家はそれに似てる気がする。


見ず知らずの人に見られる為に

他人の前で全裸になる。

羞恥心との戦い。


ただ人生の一瞬ヌードになる為に
女優は
日々ダイエットや体型管理に勤しむ。


僕みたいな脚本家も
人に知られたら恥ずかしい妄想や想像を
人に見られて恥ずかしく無い形にして世に出す。


但し。


僕に関しての「世間」はごく少数だが。
僕はそのごく少数の人が

自分の物語を
固唾を飲んで見守り
演者と一緒にため息をつき
爆笑で終わる

その余韻を感じながら笑顔で皆帰って行く。


あぁ、楽しかった。

僕もこの千秋楽を見守りながら
ため息と爆笑と笑顔を残して劇場を出た。


終わってしまえば
次を目指す。

今回の物語も
作り上げた完成形の
「舞台」は千秋楽だけど

もちろん脚本自体はとっくに上がってる訳で。

僕は今日も「次」の物語を書いていた。


ストイックで
楽しい毎日だけど
今日はお休み。


打ち上げがあるからね。