私。
斉藤レナ、18歳。大学生。
世間一般から見るとパッとせず、暗い感じの女の子。
化粧なんてしたことがない。興味がないわけではないが、そんな暇がない。
毎日、勉強に追われて自分の顔を見たりすることはなかったからだ。
私の親は公務員同士のお見合い結婚で結ばれ、私が生まれた。小さい頃から厳しく育てられた。
成績はいつもトップでいなければ怒鳴られてしまうし、浮ついたことなどしてしまえば縁を切られていただろう。
将来の夢は考えることすら許されなかった。全て親が決めつけてしまうんだ。
父は学校の校長になり、ついにトップに立った。
「レナ。お前は栄養士になれ。そして学校に勤めるんだ。」これが父が決めた私の将来だった。
私は別に苦痛ではなかった。誰かに決めてもらえる人生なんて、なんて楽なんだと思っていた。
でも私は頭が良い方ではなかった。だから必死で勉強し、やっと追いつくことができてい た。
天才とかではなく、努力型なのだ。
毎日、毎日...意味のわからない化学式や数えきれない栄養素を頭に叩き込んだ。
私の学校は女子ばかり。友達は一人もいなかった。むしろ、今まで友達という存在を作ったことがないかもしれない。
正直、人間関係を築くことは苦手だった。相手の顔色を伺いながら、嘘の自分を作るなんて面倒だった。
だから恋なんてしたことなどなかった。私には不必要だと思っていたし、私みたいな不細工には縁がない。
学校では私は浮いていたと思う。常に参考書と睨めっこをしながら、一人で勉強している。
イジメにまでは発展しなかったが存在を無視されることは多かった。
「あんた、誰?」みたいな顔で見られることもしばしばあったが、どうでも良かった。
私は独りで生きてる。そんな考えすら持っていた。
誰も信用せず、誰にも頼らず、誰にも媚びず...。
私は、ずっと独りで生きていくんだと感じていたんだ。