楽譜を渡され練習すること一時間。

「合わせる?」

「もうそこまで弾けるんですか!?」

元々練習していた麗音と違い、渚は初見だ。

それに対し、一時間弾いただけで合わせれる所まで持ってこれる彼女は驚異的だ。

~♪

しかし、両親が亡くなる前の彼女のピアノは戻って来てはいなかった。

どこか寂しげで悲しく、美しい音が音楽室に響く

「音が寂しそうですよ。」

「え?」

彼は寂しげに呟いた。

音が寂しそうなど言われたことも無かった彼女は

気の抜けたような声しか出なかった。

「寂しそうに泣いています。」

「適当なこと言わないで。」

適当などではないと彼女自身分かっていた。

「先輩の心には何があるんですか?」

「変に検索してないで早く合わせる準備をして。」

「今、合わせても何の意味もありません」

「いいから合わせる準備をして!!」

彼女は半分意固地になっていた。

「嫌です。」

「何故!?貴方は私に伴奏をさせるだけじゃ不満足って!?」

「はい、今の先輩では不満足です。」

なぜ彼がそこまで執拗に自分を追い掛け回し、

こちらが折れて伴奏を受けたのにも関わらず、

単に伴奏をさせるだけでは無いのが不思議で仕方なかった。

「じゃぁ、君は私に何を求めているの?」