ぽたり、ぽたりと頬を伝って落ちていく雫。
唇を震わせながら最後の足掻きをする。
「だ、れか……」
「あー?なんか言ったか?」
男が怪訝そうに眉をひそめ足を止める。
「……誰か助けて」
叫ぶわけでもなくただぽつりと零れたその言葉は静かな路地裏に響いた。



「いいぜ、助けてやる」



不意に響いたその声に誰しもが驚き、動きを止めた。
「だ、誰だ!?出てこい」
「出てこいもなにも、ここにいるぞ」
声は少女を担ぎあげている男の後ろから聞こえてきた。男がばっ、と振り返るや否や顔面に拳がめり込む。唸り声をあげながら体勢を崩す男から少女を奪い取ると横抱きにする。


「大丈夫か?嬢ちゃん」
そう優しく声を掛けながらも周りを足蹴にするこの男は何者なんだろう、と考えながら小さく頷く少女。
「もう大丈夫だから寝てな」
にっ、と口角を上げる男に安心感を覚えた少女は緩く微笑んで静かに目を閉じた。
その様子を見て複雑な表情を浮かべた男は転がっている男共を見下ろし冷たい声音でこう告げた。



「悪鬼-アッキ-。よくもまあ俺ら西絛組のシマで暴れてくれたなぁ。俺らがこういった行為を嫌っているのは知ってるよなぁ?…上に伝えろ。この娘は西絛組が貰うってな」


男は静かに怒りを伝えた後背を向けて歩き出した。腕には傷だらけの少女を抱えて。