夕暮れ。
まだ外は暑かった。
草野は子供の頃からあった川原にえつこを連れていった。
「ここでよくわさびが取れたんだ」
川の水に手をなじませ、草野は少しさみしそうにする。
「きれいな川なのね」
「前はもっと、きれいだった。水も多かったし、本当にわさびがたくさん生えてたんだよ」
「…じゃあサワガニならいるかなぁ」
えつこはしゃがんで川に顔を近づけた。
すると慣れないせいか浴衣の裾が川についてしまい、紺色の生地がもっと濃い色になった。
えつこはおかしくて、けたけたと笑い声をあげた。
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