「和泉……?」
「動揺しすぎだろ。
料理作ってんの、見てるだけだから」
「……そっか」
和泉はこうやって抱きしめてくるけれど、私が動くときはちゃんと離れてくれて。大人しく待ってればいいのに、どうしてわざわざ抱きしめてくるんだか。
「……うまそ」
後ろから肩に顎を乗せてそう言った彼に、口元が緩む。簡単なものばかりだけど、一応栄養のバランスは考えてると思う。
なんせ、花嫁修業歴が長いから。
「どう?」
「ん、美味い」
「ふふ、よかった」
そんな会話をしていたら、なんだか結婚してもあまり変わらない気がした。うん、上手くやっていけそう。
高校はいまのところちゃんと卒業するつもりだけれど、羽紗と彼らは同じ高校で、私は違う高校だから……。
いっそのこと、やめて神無月のことに関わるのも悪くない気がする。
──そんなこと言ったら、和泉に怒られるから言わないけど。彼は高校をやめてまで私に結婚して欲しいなんて思ってないだろうし。