「ゆ、柚ちゃん……」
忘れてた……!
柚ちゃんがいることをすっかり忘れてたせいで、とてつもなく恥ずかしい会話をした気がする。
「稀沙くんは、いつも私より上手だからそんなやり取り出来なくて」
「仕方ないわよ、和泉が低レベルだから」
「っ、ふざけんな」
──こういうやり取りが低レベルなんだろうな。いや、まぁこれが私たちらしくていいのかもしれないけど。
「まぁ、これが俺らだから仕方ねーよな。
ん、ほら乗れ」
車の助手席に押し込まれ、文句を言いながら車に乗る。それから、和泉が車を発進させて。
柚ちゃんと会話していれば、ふと流れている音楽が私の好きな曲だということに気づいた。
和泉がそのCDを持っていることは、もちろん知っていたけれど。
車に置かれているCDは、私の好きなものばかりだ。
「和泉」
「んー?」
──好き。信号で車が止まったのを見て、口ぱくで彼に伝えれば、優しく笑って左手で頭を撫でてくれた。