「岬……」



「今日のうちに和泉さんと会って、話してくる。だから……羽歌。

ちゃんと、和泉さんと幸せになってくれるか?」



「……っ、うん」



「もし和泉さんと別れるようなことになったら、俺が遠慮なく奪いに行くから」



──まぁ、和泉さんがお前のこと手放すなんてありえないだろうけど。



小さなそのつぶやきに、なぜか顔が赤くなる。和泉に好きだと言われたわけじゃないのに。



いや、前に言われたのは事実だけど。




「ああ、あと。

なんか、乃唯がぼそっと言ってたな」



「え?何?」



「〝心響の姫をふたりにする〟

とかなんとか。ま、いつでも来いってことだよ」



「ふたりに……うん」



「ふっ。じゃ、帰るわ」



またな。そう言ってくしゃっと私の頭を撫でた彼が、笑ってくれたから。



「またね」と、私も最後まで笑ってみせた。──彼の優しさに泣くのは、ひとりになってからでいい。