「み、さき……っ」
「ん?」
「っ……ふ……」
唇の隙間から声が漏れて、一気に顔が熱くなる。
そんな私の反応にくすっと笑った岬が、ちゅっとリップ音を立てたあと離れた。
「っ、」
「……羽歌」
囁くように名前を呼ばれて。堪らなくなる。話を切り出したいのに、どうしようもなく苦しくて。
それでも言葉を、と唇を薄く開けた私の唇を、彼の手が優しくふさぐ。
「わかってるから」
「っ……」
「俺と、別れたいんだろ?
わかってるから、そんな顔すんな」
唇をふさいでいた手を背中に回し、優しく彼に引き寄せられる。それがあまりにも優しくて、彼の服をぎゅっと握った。
「本音を言えば、俺はお前を離したくない。お前のために澪と向き合ったぐらい、惚れてんだから」
──そう、だ。彼は私のために、向き合ってくれたのに。何度も支えてくれたのに。私は、向き合うことができなくて。
「──でも、和泉さんに俺は勝てねぇよ」