「んじゃ、
こっちの姫は俺がいただくから」
「へ?」
「行くぞ、羽紗」
つないだままの手を引かれて、みんなに「またね」の3文字すら伝える間もなくその場を立ち去る。
「ちょ、ちょっと……!」
「病院では静かに」
「っ……!」
自分のせいじゃないのっ!
だけど、うるさくして迷惑かけるわけにもいかない。しばらく黙ってついていくと、病院を出て。
「ゆ、さ……?」
人通りのない道路に差し掛かると、彼に引き寄せられた。
咄嗟に花束は片手に持ち替えたから、つぶれることはなかったけど。せっかく買ってきてくれたのにつぶれるじゃん……!
「やっと、俺のもんになった」
文句を言いたかったのに。──耳元で囁かれた声は至って真剣で。ゆっくり、彼に体を預けた。