ポロッと、無意識に涙がこぼれ落ちた。



それを見たお母様は、さらに困ったように私の目線までかがみ込んで、指先で涙を拭ってくれる。



「お、かあさま……」



「羽歌に泣かれたら、どうしようもないじゃない」



「え……?」



羽歌を見上げたら、「なんで言うのよ……!」と羽歌は私を引きはがし、入口のところにいた和泉の背中に隠れる。



え、え……と?




「羽歌が、お前のことも大切にしてくれないなら、神無月の令嬢をやめるだと。

羽歌が親に泣きつくなんて、今日が最初で最後だろうな」



「っ、和泉のばか!」



「はいはい、安静にしとけ」



「っ……」



羽歌が和泉に宥められて、もそもそとベッドの中へ戻る。どうやらここにいなかったのは、お母様と飲み物を買いに行っていたかららしい。



「羽歌……」



「もう泣かないで、面倒くさいから」