「昔はあんなやつじゃなかったのにな」



静かな空間に落とされたその声が、あまりにも切実で。



直接的な関わりは何一つないけれど、彼の胸の内を考えると、とてつもなく胸が痛い。



「それだけのために、

羽歌をわざわざ巻き込んだのか」



「……いや?」



はぁ、と、佐原が息を吐いて。



「確かにあいつと別れることになった時に、梓を恨んだのは事実。

でも、それだけじゃ俺はここまで事を大きくしない」




──それなら。



「俺がどうして心響と敵対したチームを作ったのか。梓。お前は知らないだろ」



「……知、らない」



「──俺が元心響のメンバーだからだよ」



乃唯が、眉間にシワを寄せる。この場にいるメンバーで先代は、和泉だけだ。



自然とみんなの視線が集まると、彼は「……そうだ」と一言、つぶやいて。



「俺らの代の時に、下っ端だった。

まぁ、人数は多いしお前らが心響に入ってすぐに、ハチがこいつを切り捨てたから、知らないのも無理ねぇよ」