はっきりそう告げる梓に、迷いはどこにも見えなくて。



ただ、単純に強くなったな、と思った。梓は強くなりたいと言っていたけれど、もう十分強い。



──過去と向き合う分だけ、人は過去の傷みに傷つき、それを乗り越えようと強くなれるから。



「……お前が、嫌なヤツだったら

躊躇いなく殴ることぐらい出来んのに、」



ぽつりと、佐原が口にして。



それから固く握っていた手を解くと、ゆっくり顔を上げる。

そして、キッと梓を睨んだけれど、その目はどうしてか救って欲しいと言っているように見えた。



シンとした空間の中、「梅葉と俺が卒業してから付き合ったこと、知ってたか」と、彼が梓に問う。




「……うん」



「付き合って、上手くいってた。

──なのに、最近になってほかの男がいる気配がしたから、聞いたんだよ」



──きっと。



「そしたらあいつ、なんて言ったと思う?」



──傷ついたのは、私たちだけじゃない。



「浮気、してるって。俺よりその男を選ぶって。

〝陸と付き合ったのは、日下くんの親友だったからなのに。連絡すら取ってないし、陸にはもう用ナシ〟──だってよ」



梓が、息を呑んだ。