「さて、と。目的はなんなの?

羽歌ちゃんまで巻き込んで。俺はね、大事な人に手を出されたら自分を傷つけることぐらい容易いんだよ」



「自己犠牲、な……

そういう偽善者ぶったとこ、マジでムカつく」



チッと舌打ちした彼は、周りを見回す。



「梓は、来てねーんだ」



「下にいるよ」



──やっぱり、彼の目的は梓だったのか。いや、そうじゃなきゃなんだっていうんだ。



いま部屋にいるのは私、羽紗、和泉、稀沙、乃唯と佐原だけで。




──タイミングを見計らったかのように、岬と梓が入ってくる。私の姿を見た岬は、心なしかほっとしたような顔を見せた。



「……梓」



「陸にあの日嫌われたこと以上に怖いことなんて何もないから、

なんとでも言ってくれればいいよ」



梓が私の元へ駆け寄ってきて、「羽歌ちゃん大丈夫……?」と心配そうに声をかけてくる。



それに大丈夫と返すと、梓はにこっと笑ってみせた。



──もう、大丈夫ね。



「いまは陸以上に大切な人たちがたくさんいるから、何を言われても受け止める覚悟ぐらい出来てる」