「佐原」



「来れねぇと思ってたのにな」



「指定された場所にも一応ほかのヤツを向かわせたけどな」



「そうだ、向こうはただの罠。

こっちのヤツはほとんど指定場所にいる」



──だから、ここにはほぼ人がいなかった。私が知ってるのは、連れてきた3人組と佐原だけだ。



指定場所は、こことは反対方向なんだと思う。



どうやって、私の居場所を突き止めたのかはわからないけど。




「お父様に言ったら、すぐに羽歌の居場所を調べてくれたのっ……」



羽紗が頬を涙で濡らしながら、そう言って顔を上げる。──だから、か。



「神無月の力を使えば簡単だものね……」



居場所を特定することぐらい。



特に私はケータイの電源も入れていたわけだし、数分で見つかったんだろう。それを思いついた彼らに感謝しなきゃいけない。



「助けに来てくれてありがとう」



ゆっくりと体を起こして羽紗を抱きしめてあげれば、羽紗は私の腕の中でしばらく泣いていた。相当、心配してくれていたみたいだ。