ガンッと鈍い音が耳に届いて、体の上から重みが消える。──誰かが、佐原を殴った。



それだけは理解できたけど、息苦しさから解放されてむせ返った私の視界には状況が映り込まない。



「羽歌っ」



柔らかい声がして、まだ仰向けの体に誰かが抱きついてくる。誰、なんて言われなくてもわかるけど。



呼吸が乱れたままで、名前を呼んであげられない。



「っ、ふぇ……」



安心したように泣き出す彼女を優しく引き寄せると、羽紗は「羽歌ぁ……」と私にしがみつく。




「大丈夫だから……」



「っ、」



「……泣かないの」



ようやく視界がはっきりしてきて、部屋を見渡す。佐原を殴ったのは……位置的に、乃唯だ。



「痛ぇな……ったく」



和泉はといえば、入口のところでなぜか立ち尽くしていた。そこで入ってきた稀沙に話しかけられて、和泉は「ああ」と我に返ったらしい。



「あーあ、面白くねーの」