テキトーに作るメニューを考えて、というか食材を買った時から今日のメニューはビーフシチューだ。夏だけど。
「羽歌が好きだもんな、ビーフシチュー」
我ながらベタ惚れだと思う。でも、好きなヤツの好きなもんを知ってるって、なんか嬉しくなるよな。
なんて、らしくねぇことばっか考えながら、鍋の中身を混ぜたところで。
「っ、ぶね……羽歌?」
後ろからぎゅっと抱きつかれて、危うく心臓が止まるかと思った。危ないから料理中は引っ付くなって昔から言ってんのに。
包丁使ってる途中じゃなくてほっとした。
「羽歌?どうした?」
抱きつかれてるから顔は見えねぇし、羽歌は返事ないし。どうしたんだと尋ねれば、羽歌が首を横に振ったのがわかった。
「和泉は……私のこと、嫌い?」
「嫌いなヤツの面倒なんて見ねぇよ」
「っ、じゃあ……
なんで教えてくれなかったの」
「ん?なにを?」
「彼女、いたことあるんでしょ……?」