「羽歌、起きれるか?」



マンションまで帰ってきて、荷物を肩にかけると羽歌を起こす。別にこのまま運んだっていいんだけどな。



「……んっ、」



「羽歌」



「い、ずみ」



俺の名前を口にする羽歌。それから、腕を伸ばして俺に甘えてくる。自分で歩く気はないんだな。



羽歌を姫抱きで抱き上げると、落ち着いたように俺の腕の中に収まった。




「ばか」



無防備に、俺の気持ちも知らないで。



でも、知ったらお前は俺から離れていくんだろ?──だから、口には出せない。



婚約して結婚した後に、あの時から好きだったって教えてやるのも悪くないと思う。むしろそれが最善策。



「羽歌、」



羽歌がいつも占領してる俺のベッド。そこに下ろして離れようとしたら、いつ掴まれたのか、俺の服の裾が握られてる。



離そうとするけど、強く握ってるのか離してくれない。