「羽歌のこと、譲るつもりないですから」



「………」



「さっき、羽歌が和泉さんの話ばっかりしてたので正直ヘコみましたけど。

羽歌の彼氏は俺です」



ヘコんでんのは、俺のほうだわ。



そうやって自分を〝彼氏〟と言い切れる岬が羨ましい。なんて、な。所詮俺らの関係はいとこでしかないのに。



婚約者のはずなのに、関係が脆すぎる。



さっさと強引に羽歌と結婚してしまいたいと思う俺は最低だ。




「……渡してたまるか」



岬にも聞こえないように小さくつぶやいて、運転席に乗り込む。渡してやらない。俺が、どれだけ。



「あいつらによろしく」



「絶対手は出さないでくださいね」



軽く岬に手を上げて、車を出す。



明日……どこに連れてってやるかな。羽歌のことだから、ちょっとしたわがままは言うかもしれねぇけど。



好きなヤツのわがままなんて、可愛いもんだろ。