♪♪♪


「杏祐。私、後から知ったんだよ…小さい頃からの心臓病。走っちゃダメだったんでしょ」

何でだなんて言わないよ。
だけど、私が知ってたら。

ボソボソ呟いた言葉は全部聞こえていたらしい。


「杏果はそれで良かったんだよ。俺はここで、杏果は向こうで生きる」

「やめてよ、ねぇそんな───私たちまた会えたんだし、」


真剣な表情の杏祐なんか見たくない。


今だけは。


「夢から覚めるんだ、早く。じゃないと俺が辛い」

「やだ!!覚めたくなんかない、夢のままでいい!!このままがいい!!」


口を塞がれた。


「また会えるよ。だから今だけだ」


唇が離れ、杏祐が私に目線を合わせて微笑む。


しゃらん、と首に銀色の何かがかけられた。


「花…の形?」

銀色のチェーンに、薄いオレンジがかった白っぽい石が埋め込まれた花のネックレス。 


「杏の花。ずっと一緒だ」

グニャリと世界が歪む。



「さよならは言わないよ」

私が念を押すと、また唇に温かいものが触れた。


杏祐が離れて行く。


何か叫んでいるが、聞こえない。


理解する前に意識が遠退いていくのを感じた。