「零太さ、彼女できたの?」
やっぱりな…
絶対そうだと思った。
ニコニコ笑いやがって。気持ち悪い。
「そんなんじゃねーよ」
「え?でも公開告白したんだろ?」
公開告白?
なんだよ、それ。
変な噂になってんじゃん。
「してねーよ。あいつはただフリしてもらってるだけだ」
面倒になって全てを話した。
「なるほどね~」
望のやつ、絶対何か企んでるだろ。
「女に興味ない割にその恵恋ちゃんにはご執心みたいじゃない?」
は、何言ってんのこいつ。
そんなわけないだろ。
「ないない。恵恋はただ泣き虫で危なっかしいから俺が…」
俺が………
って俺何言ってんの?!
意味分かんねー!!
しかも俺が…ってその続き
何言おうとしてたんだよ!
これじゃ望の言った通りじゃねーか。
「俺が……?」
望は満面の笑みで俺を見ていた。
「…うぜー」
こいつ、ハメやがったな。
俺に何を言わせようとしてんだよ。
恵恋のことなんて何とも思ってない。
そうだろ?
ただフリをしてもらっているだけ。
それだけの関係だよな。
「ちぇっもうちょっとで面白い話聞けそうだったのに~」
なんなんだよこいつ…
はぁ~
やっぱ望には敵わねえな。
「…余計なことはすんなよ」
「はいはーい♪」
と、全く信用できない
返事が返ってきた。
あーあ
話さなきゃ良かった…
-恵恋 side-
「はぁ~…」
「…恵恋、それ何度目のため息よ」
夏休み真っ盛り、綾乃ちゃんと
カフェでお茶をしていた。
「えっ!私そんなにしてた?」
全然自覚してなかった…
「何に悩んでるのよ?」
綾乃ちゃんは鋭い。
だからたぶん私が言わなくても
予想はついてると思う。
「べ、別に悩んでないよっ」
心を見透かされている
恥ずかしさにバレてても嘘をついた。
「……相良くんのことでしょ?」
うぅ…やっぱり…
私の考えていることは
全て見透かされている。
「う、うん…」
終業式を最後に
相良くんとは会っていない。
でもそんなことは
当たり前だって分かってる…
だって私たちの関係は
学校で付き合ってるフリをするだけだし。
わざわざ夏休みまで
恋人同士のフリをする必要はない。
でもこの前零太くんに
抱きしめられてから
頭から離れない。
「…恵恋さ、相良くんのこと好きなの?」
へっ?好き?
思考回路が停止した。
すき?スキ?好き?
「な、なななななに言ってるの綾乃ちゃん!」
私は顔を真っ赤にさせた。
「だって、相良くんに会いたいんでしょ?」
「それは……」
否定はできなかった。
別に会いたいとかじゃなくて、
ただ頭から離れないだけで。
…会いたくないわけじゃないけど。
「恵恋ってばそういうとこ鈍いんだから」
あははっ、と綾乃ちゃんは笑った。
私、鈍いの…?
確かに恋愛経験とかはないけど…
「ま、好きになるはしょうがないよ~」
「だ、だから別に好きじゃないって。ただ…」
「…ただ?」
「き、気になる…だけ」
振り絞って出した言葉だ。
は、恥ずかしい…
私何言ってるのよ…!
「そっかそっか」
そんな私に綾乃ちゃんは
優しく微笑んでくれた。
私、綾乃ちゃんのこの笑顔すき。
だってあったかいんだもん。
私まで笑顔になっちゃうよ。
「それが分かったら作戦を実行しないと♪」
えぇっ?!作戦って?!
綾乃ちゃんは何かを
企んでいる顔をしていた。
こ、怖いよ綾乃ちゃん…
綾乃ちゃんは暫く携帯を構っていると
用事が済んだのかニコニコしていた。
「恵恋!今度の夏祭り一緒に行かない?」
「え!行きたい行きたい!」
「じゃあ一緒に行こっか」
やった~夏祭りだ♪
綾乃ちゃんと一緒にいける♪
さっき何やってるのかと思ったけど
もしかして夏祭りのこと考えてたのかな?
「ふふふっ私も楽しみ」
あれ?綾乃ちゃん?
なんだか笑顔が…怖い。
「ふふふふふふふふ」
えぇっ?!やっぱ何か企んでるよね?!
さっきの作戦って言葉も
気になるんだけど~…
綾乃ちゃんの変な様子に戸惑いつつも
私は夏祭りを楽しみに待った。