- 零太 side -
…まじ焦った。
教室に暫く戻ってこないから
何かあったんじゃないかって。
なんにもされてなくてよかったー
てか、なんで俺こんなに
焦ってんだよ…
ただの女じゃんか。
それにあいつの泣いてる姿見た瞬間
自分でも制御出来なくなって
いつの間にか抱きしめてた。
最近の俺、何かおかしい。
どうも調子が狂う。
それにあいつ顔真っ赤にさせて…
なんで抱きしめられたくらいで
顔赤くさせてんだよ。
あー本当に調子狂う。
それにあいつの前だと
なんか素が出るってゆーか…
表の顔の自分じゃいられなくなる。
あ~わけわかんね。
イライラして頭をかいた。
「あ、相良くんだ」
「かっこいい~」
すれ違いざまに女たちは
用もないのにいちいち話しかけてくる。
あ~鬱陶しい。
ただでさえイライラしてんのに。
…頭冷やしてこよ。
女たちを全て無視して
屋上へと向かった。
- 恵恋 side -
最近の私、様子がおかしい。
あと数日で夏休みになる今日、
教室で零太くんとご飯を食べていた。
わっ、まつ毛長い。
指もキレイ。
それに綺麗な目…
………………ってなに考えてるのよ~!
最近の私は零太くんばっかを
目で追ってしまうのです。
なんで?!なんで?!なんでー?!
「ん?なに?」
私の視線に気づいて顔をあげる。
やばい、目が合っちゃった。
恥ずかしさに顔を外へ向ける。
「な、なんでもない」
そういえば最近学校で
ある噂が流れているのです。
それは――
「あのっ相良くんと…如月さんって付き合ってるんですか?」
そーそれそれ。
……ってえー?!
顔を赤くさせた女の子が
私たちの元へとやってきたのだ。
ちょ、直接聞いてくる?!
しかも私、一瞬睨まれた気がする。
ど、どうしようなんて答えれば…
「付き合ってるけど」
えっ?!
思わず口に出してしまいそうだった。
零太くんは面倒くさそうに答えると
またパンを食べ始めていた。
「そ、そっか…」
女の子は顔を青ざめさせると、
どこかへと行ってしまった。
「れ、零太くん…どうしてそんな嘘…」
「は?嘘?何言ってんの」
少しイラッとしたかのように
眉間にシワを寄せた。
「フリなんだから答えるしかねーだろ」
私のおでこにデコピンをしてきた。
「いった…」
そ、そうだけど…
それでもやっぱみんなを騙してる
罪悪感というかなんというか…
…気のせいかな。
さっきよりみんなの視線が
鋭いものに変わってる気がする。
噂と言うのは恐ろしいもので
私たちが付き合ってるというのは
1日もかからず全校生徒の耳に入った。
でも運良くもうすぐ夏休み。
これでみんなから
鋭い視線を浴びることがない。
ふふっ夏休み楽しみだなぁ。
- 零太 side -
「れーいた♪」
この声は…
しぶしぶ机から顔を上げると
うざったい奴がいた。
「おいおい零太。そんなあからさまに嫌そうな顔すんなって♪」
こいつは篠原 望(シノハラ ノゾム)。
認めたくはないが俺の親友。
こいつの神経の図太さには
いつも感心するわ。
「それよりさっ聞きたいことあるんだけど♪」
やっぱりな。
あえて会わないよう避けてたのに
わざわざ自分から来やがって…
聞きたいことなんて
多方予想がつく。
「はぁ…なら屋上行こうぜ」
俺たちは屋上へ向かった。