ねえ好きって言って 【完】

「……ああ、恵恋ちょっと待ってて」




「わ、わかった」




どうしたんだろう。




なんだか2人とも
変な感じだった。




2人が教室を出ていくのを
見送ると椅子に座って待つことにした。




なんだか嫌な予感がするな~…





-零太 side-




俺たちは空き教室へときた。




なんか凪怒ってるよな。




「凪、話って?」




凪は重い口を開いた。




「俺、恵恋に告白した」




はっ?




突然のことに言葉が出なかった。




告白?
おいおい、嘘だろ。




冷や汗が垂れる。




「な、なんで…」
「零太さ俺に嘘ついただろ」




「嘘…?」




「恵恋と本当は付き合ってないらしいじゃん」




ギクッ




な、なんでそのことを…
もしかして、恵恋が?




俺は言葉が出なかった。

凪が怒るのも無理はない。




「零太が嘘をついた理由はなんとなく分かる。でも俺が怒ってる理由はそんなことじゃない」




…違うのか?
じゃあ、何に怒ってんだよ。




「じゃあ、何に…」
「俺、約束したよな」




「約束?」




「恵恋を悲しませることはするなって」




凪の顔はいつも以上に
真剣そのものだった。




「は?俺がいつ悲しませたんだよ」




何言ってんだよ。
俺がいつ悲しませたっていうんだよ。




今日だって避けられてんのは
俺のほうだぞ?




「昨日校門にいた女の子あれ誰だよ」

「あー、あいつは…元カノだけど」

「零太あの時恵恋にきつい言い方して2人でどっか行ったよな?それをどんな思いで恵恋が見てたのか知ってんのかよ」




恵恋が…?
なんでそこに恵恋が関係してんだよ…




「別にあいつとはもう何の関係もないし」
「…本当だな?」

「ああ」




それで今日あんなに俺のこと
避けてたのか。




「ちゃんとあの子のこと恵恋に説明してあげろよ」

「わかった」




凪はやっといつもの顔に戻った。




「今日は2人で帰っていいよ♪本当は俺が恵恋と帰りたいけど♪」

「…あ、お前何勝手に恵恋に告白してんだよ」




忘れるところだった。

恵恋、なんて返事したんだろう。




そのことが気がかりだった。
「だって零太がよそ見ばっかしてるから♪」




なんだよそれ。
よそ見って別に俺は…




「俺、恵恋にマジだから、相手が零太だろうと容赦しないから♪」

「ああ、受けて立つよ」




恵恋は誰にも渡さない。




俺が守ってやるんだ。




教室へと戻ると
待ちくたびれた様子の
恵恋が待っていた。




「遅いよ~零太くん~」




恵恋の顔を見た途端、
どこか安心する自分がいた。




「わりぃ…帰るか」




「うんっ」
「恵恋さ凪に告白されたの?」




そう問い掛けると
恵恋は肩を震わせた。




「う、うん…」




なんでこいつ
動揺してんだよ。




「…返事は?」




正直この質問は
聞きたくなかった。

それでもなんて答えたか
気になって仕方がなかった。




「…まだ、してない」




よかった…




俺は安堵のため息を
吐いていた。
…待てよ。
まだってことはOKする
可能性もあるってことだよな?




「…凪のこと好きか?」




「嫌いじゃないけど…」




恵恋は困ったように
苦笑いをしていた。




「もし私が凪くんのこと好きって言ったら、零太くん…どうする?」




ドキッ




なんだよそれ…




言葉が出なかった。




恵恋が凪を…?