ねえ好きって言って 【完】

「最初っからそう言えよ」




そう言って俺は
美琴の頭を撫でた。




あっやべ。
昔の癖でつい…




「零ちゃん…私ね…」




「やっぱ零ちゃんのことが好きなの!」




はっ?!
突然の告白に目を丸くした。




「なんだよそれ…」




だが俺は昔のことを思い出して
美琴から視線を外した。




俺を振ったのは
美琴じゃねーか。
なのに、なんで今さら…
「私、零ちゃんと付き合ってて本当に楽しかった。それに振ったあとすごく後悔したよ」




何言ってんだよ。
俺と別れたすぐに
他の男とデキてたくせに。

信じらんねー。




俺があの時どんなに辛かったのか
美琴には分かんねーだろうな。




「だからもう一度やり直したい」




「………ごめん」




今更付き合うなど
そんなことは出来ない。




「そうだよね」




美琴は泣くのを
グッと堪えていた。




「美琴…」

美琴が泣きそうになるのを見ると
つい手を伸ばしてしまっていた。




「ダメだよ零ちゃん」

美琴はその手を止めさせた。

「そんなことされたら私期待しちゃうよ?」




美琴…




俺はそのまま手を戻した。
美琴の気持ちには
応えられない。




「でもっ気持ち伝えれてよかった」




美琴はスッキリしたように
笑っていた。




「ごめんね、また私なんかを思い出させちゃって」

「別に、そんなことないよ」




確かに美琴を恨んだ時もあったが
付き合ってるときは
本当に好きだったし楽しかったから。




「そういえば、さっき校門のところにいた女の子って彼女?」

「いや…………ああ、俺の彼女」

「あははっ零ちゃん相当惚れてるんだね」




え?惚れてる?
そんな風に見えてたのか。




「だって零ちゃん、自分じゃ気付いてないかもしれないけど、彼女のこと思い出してるときすっごく嬉しそうにしてたよ?」

「なっ」




自分の心を見透かされたようで
急に恥ずかしくなってきた。
「……大事にしてあげなよ」

「ああ」




「ところでさ!最後に1つだけお願いがあるんだけどいい?!」




お願い?
まあ、最後っていうんだから
別に聞いてやってもいいか。




「お願いって?」





「それはね……」





-恵恋 side-




「…恵恋、大丈夫?」




さっきの女の子誰なんだろう…
それに零太くんちょっと怖かった。




「ったく、恵恋がいるっていうのに他に女作りやがってさ」

「しょうがないよ、だって私は本当の彼女じゃないし」




「……え?」




あっやばい。


気づいた時には遅かった。
つい本当のことを話してしまっていた。




「恵恋、それどういうこと?」

「え、えっとその…」




ど、どどうしよう…!
凪くん真っ直ぐな目で見てくるし
これ以上嘘はつけないよ~!




私は観念して本当のことを話した。




別に零太くんの友達なら
話しちゃっても大丈夫だよね?
「零太……」




全てを話し終えると
凪くんは怒っているようにみえた。




「凪くん?どうしたの?」




なんでそんなに
怒ってるんだろう。

確かに騙しちゃったのは
悪いと思うけど……




「あ、いや。気にしないで。それより話してくれてありがと恵恋♪」




そう言って凪くんは
私の頭をポンポンと優しく
撫でてくれた。




「ッ……」

今、そんなに優しくされると…




「え、恵恋?!なんで泣いてるの?!」




堪えていた涙が溢れ出していた。




そんなに優しくされると
泣いちゃうに決まってるじゃんっ
「うぅっ、ごめんね。凪くん…」




何度も涙を拭っても
涙は止まらなかった。




女の子とどこかへ行ってしまう
零太くんを見てすっごく辛かった。

このまま帰ってこないかもって…




零太くん…会いたいよ。




「……へっ」




その瞬間私は抱きしめられていた。




「なっ凪くん?!」

な、なんで私を抱きしめて…
どうしたの?!




抱きしめられて
思考回路が上手く
働かなかった。




ど、どうしよう……
「俺っ恵恋が好き」





「……えっ?!」




ど、ど、どーゆーこと?!
私が好き?!えぇ?!




突然の告白に私の頭の中は
大混乱してしまっていた。




そして凪くんの抱きしめる力が
強くなった。




「恵恋が好きなんだ!」




「ちょっ、ちょっと待って凪くん」




私は凪くんの胸を押し返した。




ハァハァと乱れる呼吸を
深呼吸して落ち着かせる。




「ほ、本当に?」

「うん」